社会問題

「世界に一つだけの花」と競争選抜社会

私は、講義で現代日本の競争選抜社会を説明する際に、SMAPの楽曲「世界に一つだけの花」(2003年)を教材に使います。この曲は、依然として国民的人気を維持しています。竹内洋=島薗進的な言い方をすれば、明治30年代から続く「修養的立身出世主義」(慰め…

安倍自民と報道の自由

(前略)自由を提供することのできる社会はまた、御用インテリゲンツィアなしにやっていける社会である。それは、国民の最も口うるさくおそらく最も才能のある部分による、とめどない妨害にもよく耐えだけの活気に満ちている。そのような妨害は、自由の代価…

大阪都構想否決

大阪都構想、僅差で否決。橋下市長は政界引退へ。ポピュリスト政治の限界を大阪市民が見抜いたということで、いいことだと思います。

世界の警察犬

昨日、テレビ番組『報道特集』で、かつて自民党防衛族のドンだった山崎拓氏が、安倍晋三氏の安保法制を評して、「中国の軍事的脅威は認めるが、だからといっていきなり専守防衛を捨てるのは行き過ぎだ」「アメリカが老いた世界の警察官だとすれば、日本をそ…

日本人の残虐性ー地下鉄サリン事件20年に思うー

日本人は自分が残虐な民族といわれることを心の中では承服しがたいと思っています。どの民族でも残虐行為を平気で犯す人たちが、ある比率でいます。太平洋戦争後の捕虜収容所でも相当部分は、やくざ出身の兵士が支配するところとなったという表現があります…

在日ハーフとしてのやしきたかじん

ただし、角岡伸彦氏の著作『ゆめいらんかね やしきたかじん伝』(小学館)によると、たかじんは在日朝鮮人と日本人のハーフである。それは多くの人が知っていたが、結局、本人は公にすることなく死んでいった。同書では、たかじんの故郷・大阪西成に住む在日…

独立不羈と自発的隷従

昨日のBSテレビ『英雄たちの選択』は、吉田松陰の特集でした。吉田松陰の思想と行動を読み解くためのキーワードとして、「独立不羈」という言葉が取り上げられていました。非自民の沖縄県知事をシカトするなど、アメリカへの「自発的隷従」を強めている安部…

女性の美と戦争

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/fcolumn/CO005376/20140812-OYT8T50212.html?from=osusume&google_editors_picks=true より 転載 女性の美と戦争 「新女性美の創造」。こうした見出しが読売新聞の家庭面に登場したのは1941年1月24日のこと。…

壊れたホットプレート

浜 景気・不景気の問題ではないですよね。本当の問題は“豊かさのなかの貧困問題”なのだと思います。都会で働く人々の中には、非正規雇用でワーキングプアという人が多い。その割合が、先進国としてはあまりに高すぎる。厚労省が七月に発表した国民生活基礎調…

「精神世界」と輪廻転生ー信田さよ子氏に答えてー

山川紘矢『輪廻転生を信じれば人生が変わる』(ダイヤモンド社、2009年)を読了。元財務官僚の山川紘矢氏は、元外務官僚の夫人・山川亜希子氏とともに、日本の「精神世界」のキーマンの一人である翻訳家=著述家です。この本では、1.人間は、人間から人間へ…

理研・笹井氏の自殺について

理研の笹井芳樹氏が自殺したそうです。死者を鞭打つ気はありませんが、社会学者デュルケームの『自殺論』の類型に当てはめれば、1.自己本位的自殺(遺された家族のことはあまり考えていない)、にして、2.アノミー的自殺(ノーベル賞に手が届きそうな超…

パレスティナ紛争と「男らしさ」

四つの図をとおして「戦争の巣」とでも呼ぶべき地域がある。南アフリカ、バルカン、パレスティナ、アフガニスタン、インドネシア半島である。(中略) これらの地域においては頻繁な戦闘の間に「徹底的に闘う戦争文化」とでもいうべき男性社会の伝統が生じる…

日本の格差問題をめぐって

日本は無名の人つまり「常在菌的な人」のおかげで何とかやれてきた。外国人が日本人を見直すのは無名の人に出会った時である。格差はどうしても生じるが「等しからざるを憂うる」政治によって辛うじて釣り合いがとれる。これを政治が真っ先に忘れてどうする…

いじめと少年への性的虐待

なるほど、子どもの世界には法の適用が猶予されている。しかし、それは裏返せば無法地帯だということである。子どもを守ってくれる「子ども警察」も、訴え出ることのできる「子ども裁判所」もない。子どもの世界は成人の世界に比べてはるかにむきだしの、そ…

「自発的隷従論」とフランツ・カフカ

かくも卑劣な行いを少しでも感じたならば、獣たちでさえ決して耐えられないだろう。あなたがたは、わざわざそれから逃れようと努めずとも、ただ逃れたいと思うだけで、逃れることができるのだ。もう隷従はしないと決意せよ。するとあなたがたは自由の身だ。…

安倍総理の憲法論

安倍 憲法の議論でよく言われるのは、憲法というのは国の権力を縛るものだという考え方です。しかし、これはある意味古色蒼然とした考え方であって、専制主義的な王制があった時代では、憲法は確かに権力者に対して権力の行使を縛るものでした。そのなかで国…

安倍政権の教育政策に思う

私は、現在の思春期をめぐる社会病理を論ずるのに大きなためらいと惑いを覚える。率直に言って私は何か危ういものをかすかに感じているのだ。現在の思春期よりも、それを論じる角度に。 学校内暴力や非行は、ほんとうに、最近になってにわかにふえているのか…

ニート、過去最高2・3%

http://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/201306/0006086269.shtml より転載 ニート、過去最高2・3% 63万人、子ども・若者白書 政府は18日午前、2013年版「子ども・若者白書」を閣議決定した。15〜34歳の若者で、仕事も通学もしていな…

ママカースト

http://mainichi.jp/select/news/20130518mog00m040010000c.html より転載 ママカースト:収入差や生活スタイルで序列化 母親たちを呪縛 ◇部屋の広さ、受験、ブランドもの…育児期の深刻な悩みに <差異のあげつらいは、住まいから始まって、いずれ幼稚園の選…

憲法21条問題

国会の憲法改正論議で、21条「表現の自由」に「公の秩序に反しない限り」という付帯条件を追加するという自民党案について、安倍首相は「オウム真理教の殺人教義」を例に挙げて説明していました。いまだに、オウム真理教事件の政治的悪用が続いています。オ…

体罰と日本社会

(前略)佐渡の金山などの特殊なところではいろいろな体罰があったろうが、江戸の家族は子どもにはむやみに体罰を加えなかったらしい。むしろ明治以後、体罰は兵舎から始まり、学校が兵舎をモデルにしたものになってゆき、一方ではそういう学校や兵舎を体験…

原発問題と世代間倫理

「ごみを出すことに慣れきり、反省がなくなった・・・・・・未来というごみ箱に核のゴミを捨てているわけです。それでは我々の子孫はたまらない」(倉本聡) *私は「生まれ変わり」という宗教的信仰をもっているので、「我々の子孫」ではなく「我々自身」がたまら…

科学者の精神健康について

(前略)科学や哲学は、どうしても物事を一般化せずにおれぬ者の精神健康のために発明されたのかもしれない。ついでにいうと、サリヴァンのいうように、人間は真の満足に達すれば深追いはせぬものであり、昇華は代用満足で真の満足ではないからいくらでも追…

いじめ問題の根源

最近、いじめ問題に関して社会学者の内藤朝雄さんがよくテレビでコメントしています。1.学校への法と警察の導入、2.学級制度の解体、が彼の持論なのは知っていましたが、私も賛成です。ドゥルーズ流にいえば、「規律=訓練」(dicipline)社会から管理(cont…

上野千鶴子氏への内田樹氏の批判について

http://president.jp/articles/-/8536?page=2 より転載 「おひとりさま」は最期まで幸せといえるか 人類史上例外的な「幼児のままでいい社会」 だから、消費社会が「家族は解体されねばならない」と宣言したのは当然のことだった。夫も妻も子どもたちも、か…

フリーターでもニートでもない「SNEP」

http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&id=2332728&from=home&position=3 より転載 フリーターでもニートでもない「SNEP」に注目集まる フリーターでもニートでもない、新しい概念「SNEP(スネップ)」が話題になっています。東京大学社会科学研究…

体罰ー軍隊から学校へー

http://digital.asahi.com/articles/TKY201302180413.html より転載 体罰、近代日本の遺物 「持たざる国」補う軍隊の精神論 ■片山杜秀(政治学者) 教師に体罰を受けた。東京の私立小学校。しつけは厳しい。私語するとひざを打たれる。耳を引っ張られる。痛…

未来の他者との連帯

社会学者の大澤真幸は、見田宗介との共著『二千年紀の社会と思想』(太田出版、2012年)で、原発問題を論じて、「未来の他者との連帯」は「現在のわれわれにとって義務」なのか、と問い、ハイデガーの弟子ハンス・ヨナスの責任論を、「怪しげな領域に入って…

いじめ自殺について

外でのいじめられっ子は時には内で暴君となる、しかし、最後の誇りとして家族の前では「いい子」であり続けようとする場合も多い。最後の誇りが失われそうになった時に行われるのが自殺である。自殺による開放幻想はすでに「無力化」の段階からはぐくまれて…

価値判断をわたしたちの手に

田中美知太郎さんのいう「技術の技術」、それから鶴見俊輔さんのいう「哲学を汲みとること」。ここには、明晰判明な根拠はないけれど、ここは一つ身を預けた方がいいという判断までを含めた、より見晴らしのよい知恵があります。明晰判明とか明証性とか確実…