2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

高橋留美子とハンディ・ゲーム  

高橋留美子(1957-)は、子ども向けの通俗マンガ家と思われているのか、日本ではサブカル評論家に論じられることが少ない(論考をご存じの方はご教示下さい)マンガ家ですが、私は後世の人はこの人の才能を高く評価するだろう、と予想しています。アメリカの…

武士道病と任侠幻想

氏家幹人さんの「サムライとヤクザ」(ちくま新書、2007年)を読了。江戸時代の史料の歴史学的な分析を通じて、次のようなスケールの大きい仮説を提出しています。 自分たちはまぎれもない武士なのに、町や村の荒くれ男たちと比べると男(戦士)として明らかに…

J・ホラーにおける性差別

J・ホラー「呪怨1・2」を見た感想です。情報機器を小道具に使った演出のうまさは認めますが、私の感想は、恐怖よりも怒りが先に立つものでした。 夫に惨殺された妻が地縛霊となり、幽霊屋敷に関わった人間を次々に呪い殺していく、というストーリーですが、D…

カルテとしての「新世紀エヴァンゲリオン」

先に「ゴスロリ少女とグノーシス主義」という文章をアップしておきましたが、アダルトチルドレンとグノーシス主義というテーマは、現在の先進国の大衆文化、特にキリスト教の伝統をもたない日本の大衆文化においては、大きな問題だと思います。「テーマはア…

「和の身体」を強制していいのか?

中央教育審議会が、日本の「歴史と文化を尊重する」という観点から、中学校教育の体育において「武道」を男女ともに必修とし、2011年から施行すると発表しました。私は、これが旧左翼のように「軍国主義の復活につながりかねない」とは思いません。日本の武…

親分は教祖様

天理教郡山大教会のご好意で、原則として教会の信者にだけ配布される非売品の「平野楢蔵伝」(1988年)を入手しました。平野楢蔵さん(1843―1907)は、「恩地楢」と呼ばれた悪名高いやくざの大親分から、天理教の最初の教会長へと劇的な回心をとげた人です。…

日本の「女頭目」の伝統

赤松啓介さんの「非常民の民俗文化」(明石書店、1986年)を読むと、ムラや被差別部落や都市のスラムにおける「女頭目」の伝統についてかなりのページが割かれています。 「いずれの時代であろうとムラやマチを統御した女傑があった。彼女たちは全く無名のう…

母だけではないアニマ

*「愛知学院大学人間文化研究所所報」33号より転載 ────「すべての女性は美しい。男性は、美しい女性のために作られた玩具である」(出口王仁三郎) このエッセーの目的は、近代という時代が生んだ深層心理学の理論が、現代日本の大衆消費社会の現実をもは…

精神科医・斎藤学氏の勘違い

親フェミニズムを標榜する男性知識人が、覇権的男性性とグルになる男性性から完全には脱却できないでいる一例として、マスメディアで高名な精神科医の言説を取り上げておく。精神科医の斎藤学氏は、日本にアメリカからアディクション・アプローチを本格的に…

国家の品格?

「武士道」(1900年)で知られる新渡戸稲造(1862-1933)が生涯ジャンヌ・ダルクを崇拝していたことは案外知られていないと思います。 祖父のジャンヌ・ダルクに対する崇敬の思いは、明治十一年、札幌にいた十六歳頃に始まり、当時のノートによれば、彼はキ…

ケロロ平和主義

──── 「本物の異端は、たぶん、道化の衣装でやってくる。」(安部公房「ミリタリー・ルックについて」『内なる辺境』中公文庫1975年) 共謀罪の導入の是非が国民的話題になっている。「暴力はよくない」という市民の素朴な感情が、結果的にウルトラ監視社会…

女性の品格?

坂東眞理子・元男女共同参画室局長の「女性の品格」(PHP新書、2006年)がベストセラー街道を快進撃しています。この本で、坂東さんは、人間関係のゴールデン・ルールは「自分がしてほしくないことは人にもしない」という孔子の教えだとしています。「自分が…