書評

池内了×島薗進

池内了×島薗進『科学・技術の危機/再生のための対話』(合同出版、2015年)を読了。こういう好著がマイナーな出版社からしか出ないところに、現代日本におけるジャーナリズムの貧困を感じます。

宮台真司さんの宗教音痴

高岡健・宮台真司(編)『こころ「真」論』(ウェイツ、2006年)を読了しました。宮台真司さんが、「日本の宗教文化」についてはろくに考えたことがないことがよくわかる本です。

読書の日

今日は、秋山さと子『ユングとオカルト』(講談社現代新書、1987年)と、ハワード・フィリップス・ラブクラフト(原作)宮崎陽介(漫画)森瀬繚(解説)『邪神伝説ークトゥルフの呼び声』(PHP研究所、2009年)の2冊を読了しました。後者に収録されている森…

渡辺みえこさんの村上春樹論

渡辺みえこさんの『語り得ぬもの:村上春樹の女性(レズビアン)表象』(お茶の水書房、2009年)を読了しました。面白い本ですが、期待が大きかっただけに、個人的には「いまいち」という感想です。この人、以前の『女のいない死の楽園 供犠の身体 三島由紀…

鷲田清一さんの本

昨日は、哲学者の鷲田清一さんが書いた『聴くことの力-臨床哲学試論-』(阪急コミュニケーションズ、1999年)を読了しました。面白く読めました。

吉本隆明『共同幻想論』

*吉本隆明『共同幻想論』(角川文庫ソフィア、1982年) 確かに、「共同幻想」=個人に外在し、個人を拘束する一種独特の実在である「社会的事実」または「集合表象」(デュルケーム)は、G・H・ミードの言う「重要な他者」との出会いを経て成立するものだと…

かもめ食堂―「男らしい国家」からの逃走

荻上直子監督の映画「かもめ食堂」(2006年)が佳作だったので、群ようこの原作「かもめ食堂」(幻冬舎、2006年)も読みました。本の帯には、以下のようにあります。 毎日ふつうで、おいしくて、小さいけれど堂々としていました。 ヘルシンキの街角にある「…

武装としてのロリータ・ファッション

嶽本野ばらの小説「下妻物語ーヤンキーちゃんとロリータちゃん」「下妻物語(完)」を読了しました。2004年の映画版が佳作だったので、原作にも目を通してみました。主人公の竜ヶ崎桃子のロリータ・ファッションは、茨城県下妻市というジェンダーに関して保…

自傷系サイトの危険性

この前、ある精神科医の方にネット自殺関連のことで話を聞いた。その中で興味深かったのは、自殺系サイトや自傷系サイトの中で集団ができると余計なライバリティ(自分の方がもっと辛い、もっと病んでいる、というような)が生まれてしまい、その中で負のエ…

アダルトチルドレンとグノーシス的なるもの

雨宮処凛の小説「EXIT」(新潮社、2003年)を読みました。本のオビには、「新潮ケータイ文庫アクセス数No.1」と書いてあります。自傷系サイトで知り合った若者たちの自助グループ(「ジジョ」)が、暴走して、中心メンバーが自殺することによって解散すると…

司馬遼太郎とヤクザ映画

評論家の加藤周一が、団塊の世代に司馬遼太郎の小説の人気が抜群に高いことについて、次のような分析を加えています。 何十万の読者に訴えるためには、小説の根底にある価値観が、大衆のそれと一致するか、少なくとも一致しているかのような印象を大衆に与え…

武士道病と任侠幻想

氏家幹人さんの「サムライとヤクザ」(ちくま新書、2007年)を読了。江戸時代の史料の歴史学的な分析を通じて、次のようなスケールの大きい仮説を提出しています。 自分たちはまぎれもない武士なのに、町や村の荒くれ男たちと比べると男(戦士)として明らかに…