2009-11-01 吉本隆明『共同幻想論』 書評 *吉本隆明『共同幻想論』(角川文庫ソフィア、1982年) 確かに、「共同幻想」=個人に外在し、個人を拘束する一種独特の実在である「社会的事実」または「集合表象」(デュルケーム)は、G・H・ミードの言う「重要な他者」との出会いを経て成立するものだと思います。しかし、その「重要な他者」は基本的に「性的パートナー」であるという「対幻想」論は、戦後民主主義下の「近代家族」にしか当てはまらないでしょう。この本は、「皇国少年」として、天皇を家長とする「家族国家観」を内面化して育った吉本隆明氏が、戦後民主主義社会と近代家族に再適応するために書いた本であり、そうした歴史資料として読めば、面白いと思います。