2022-01-01から1年間の記事一覧

死に向けて

私の父は、アルコール依存症から多臓器不全で62歳で若死しました。しかし、私は6年前に断酒に成功したので、もう少し長生きすると思います。私の母は、3回ガンを発病し、3回目のガン(上顎ガン)で、82歳で死にました。私もおそらく最後はガンで死ぬのではない…

ヘンジニアとして

ヘンジニアとは、ノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中さんが自称して使っていた言葉です。田中さんは、管理職に昇進しないか、という会社の誘いを断って、「生涯ヘンジニアとして生きます」と宣言していました。私の父は、若くして社長賞を受賞するよ…

ポジティブ心理学批判

本の紹介です。カバナス&イルーズ『ハッピークラシーー「幸せ」願望に支配される日常』みすず書房、2022年メディアや市場に「幸せ」言説が溢れるようになったのは、ポジティブ心理学の影響が大きい。それは「幸せの科学」であるとされてきた。レジリエントで…

賀川豊彦と「キリストの侠気」

「生協の父」としても知られる、近代日本を代表するキリスト教社会運動家の賀川豊彦(1888-1960) は、昭和天皇崇拝と部落差別発言の問題のせいか、日本のキリスト教神学者の間での評価はいまひとつのようです。しかし、賀川が大きな社会的功績を残したことは…

オウム真理教事件の受容

オウム真理教のポアの教えが有名になったのは、人間を人間より少し高い立場から扱う人々ー教師・医師・宗教家のような「先生」商売の人たちーは、単なる攻撃性を大義によって正当化することがある、という人々の日常経験を想起させたからでしょう。それに対…

昭和天皇のカリスマ性

故・中井久夫氏は、昭和天皇の甲高い声を評して、「いつも緊張している声」と形容していました。また、昭和天皇の極度の風呂嫌いについて、「自分にリラックスを許さなかったのではないか」と言っています。そういうところに、カリスマ性があったのだと思い…

救えないなら生まないで

21世紀前半の日本で、「グノーシス主義との対話」は継続されているようです。https://www.youtube.com/watch?v=ZvwdDxncn70

金光教と転換性障害

http://www.konkokyo.or.jp/undou/aiyokakeyo/movement/movement.htmlより転載 私たちが普段は当たり前のように思っていることでも、当たり前でないことに気づかされ、あらためて神様とのつながりを感じるきっかけに、病気や事故があります。 ある主婦の方が…

イエスと「足を洗う」行為

イエスは、十字架刑になる前日にも、弟子たちの足を洗ってやり、「私の死後も、お互いに足を洗い合うように」と伝えました。足を洗うという行為は、「相手に対して謙譲であれ」という意味と同時に、「心の余裕(ゆとり)を忘れるな」という意味もあったと思い…

学校社会の勝ち組としての教育者

https://synodos.jp/opinion/society/19993/ また、こう言うと学校の先生批判になってしまいますが、やはり子どもの時に学校で良い体験をした人じゃないと先生にはならないという面があると思うんですよね。学生の頃の記憶を思い出したくないような人は、自…

おんな・いのち・よそもの

日本の1970年代以降の第二波フェミニズムは、思想的には「80年代生命主義」の一種と見ることもできます。しかし、田中美津さんの著作『この星は、私の星じゃない』(2019)はその「よそもの」感覚(異邦人感覚)によって、むしろグノーシス主義に近いと思います。

大衆文化とグノーシス主義的なもの

現代日本の大衆文化におけるグノーシス主義的なものを解説するときには、いつもこの動画を見せています。家入レオの『サブリナ』のテーマは援助交際だそうです。動画では、「牢獄としての世界」、「悪にまみれていく自分」、「脱出のための鍵」、「垣間見え…

君たちはどう生きるか

宮崎駿監督の新作は、吉野源三郎原作「漫画版 君たちはどう生きるか」を踏まえたものだそうです。少年が、無職の年若いおじさんとの会話を通して成長する小説です。私が重要性を強調した「無用者との斜めの関係」が注目されるでしょう。 https://books.rakut…

イギリス社会と認知行動療法

東畑開人さんから聞いたのですが、イギリスで認知行動療法が発達したのは、新自由主義的政策を進めたサッチャーが、精神科医を嫌って権力から外そうとしたからだそうです。さもありなん、という話です。

旧統一教会報道

オウム真理教事件の際に、事件を教団の根本教義の聖無頓着とその受容を可能にした現代日本社会における人間関係の希薄化にまで掘り下げた報道は出ませんでした。旧統一教会の問題に関しても、日韓の歴史清算の問題に掘り下げた報道は出ないようです。

天理教とジェンダー不平等

天理教婦人会河原町支部・あゆむ会が発行している「YOME-YOME」ーこの家父長制丸出しのタイトル!ーは、なんと1万部以上出ているそうです。天理教のジェンダー平等への道は、遠いようです。 https://note.com/be1960/n/ne0ed6af8ae97

合理主義・生命主義・グノーシス

人文書院は、デカルト流の心身二元論に反発して、「心から体を治す」民間精神療法の大正期における流行に共鳴する形で出発しました。民間精神療法の流行は、その後、新宗教に吸収されて、生命主義的救済観となりました。他方、人文書院の後継者たちは…

朝日新聞における宗教とジェンダー

https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S15483167.html 論壇時評)新興宗教と女性 「信仰」通し搾取、社会の縮図 東京大学大学院教授・林香里 朝日新聞の昨日の「宗教とジェンダー」に関する記事はひどかった。まず、「新興宗教」というのは差別用語で用…

村上春樹と実存主義

村上 ぼく、一年半ばかり前から、半年間位フランス語をやって、カミュの『異邦人』を読んだんですよ。あれ面白かったけど、小説としてはそれほど面白くないんですけどね、でも一種のメッセージでしょう、あれ。まあ一種の寓話ですね。でも、ああいう小説はい…

無意識の同性愛嫌悪

「宗教とジェンダー」の講義で、ニューギニアのサンビア族における、少年が「男らしい戦士」になるために、先輩戦士の精液を飲む(「授乳」してもらう」)という事例の話を紹介したら、男子学生から「気持ち悪い」という反応が頻出しました。「無意識の同性愛…

子どもの遊びの貧困化

この「遊び」も、昔と今では大分変わってきています。昔の子供の遊び、例えば「鬼ごっこ」には、その中に「体を動かす」「自然と接する」「質の良い人間関係」が含まれています。一方、今の子どもの代表的な「遊び」である。コンピューターゲームには、三要…

今年度の達成

このブログ、今日10万アクセスに到達しました。今年度の私の最大の達成は、単著を出版したことではなく、1.断酒生活が6年目に突入した、2.体重を10キログラム落とした、という健康上の達成でしょう。

複雑性PTSDからの回復者

神田橋 患者さんに励ましの言葉として常用しているのは、世の中に役に立たない経験なんていうのはひとつもないよ。それが先程のディスカッションに対する答えです。絶対、大きなトラウマを乗り越えた人はみんなすばらしい人になりますよ。だから、それが楽し…

複雑性PTSDと人間の自然回復力

なお人間の自然回復力を促す四因子として「①からだを動かす、②自然を楽しむ、③良い人間関係を味わう(相手が動物でも可)、④遊ぶ」が知られています。この四因子には、敵対・混乱モードから友好・安心モードへの移行をサポートする作用があります(原田誠一「私…

悪の凡庸さ

葉梨(元)法務大臣の「死刑のハンコを押すだけ」発言は、アーレントがナチスのアイヒマンを論じた「悪の凡庸さ」を連想させます。もっとも、現実のアイヒマンは、平凡な役人ではなかったようですが。葉梨氏は、死刑制度について真剣に考えた経験がないようで…

スマホ依存と「斜めの関係」

スマホ依存を治療するための野外キャンプの試みの紹介です。 https://youtube.com/watch?v=rHEHakyxx-U… 子どもたちに大学生のメンターをつける、というのがミソでしょう。「無用者との斜めの関係」を通して精神的に成長させているのだと思います。 https://…

村上春樹と実存主義的なもの

村上春樹のデビュー当時のインタビュー「半年間くらいフランス語をやって、カミュの『異邦人』を読んだんですよ。…あれ読んでから、書こうかなという気になった」「私の文学を語る」(聞き手・川本三郎、『カイエ』1979年8月号)。 *村上春樹の出発点からあ…

オウム真理教とグノーシス主義的なもの

あまり知られていないことですが、オウム真理教の信者には、ヘルマン・ヘッセが修行者を描いた小説『シッダールタ』の愛読者が少なくなかったようです。大衆化したグノーシス主義的なものが、事件の底流にあります。 https://books.rakuten.co.jp/rb/1718165…

「機責め」を禁止する法律の必要性

旧統一教会問題に関して、人間の相互作用を重んじる社会学では、そもそも「マインドコントロール論」を認めません。私は、宗教団体は浄土真宗でいう「機責め」(相手の罪悪感を煽り立てる危険な布教)をしてはいけないという法律を考えれば良いのではないかと…

新海誠『天気の子』とジェンダー

テレビで、新海誠の大ヒットアニメ『天気の子』を見ました。空と都市の絵は見事でしたが、「天気の巫女は人柱」という設定、「少女の胸」にこだわった視線に、ジェンダー保守を感じました。もちろん、ジェンダー保守の作品だからこそ、大ヒットしたのでしょ…