「手を触れる」ことの治療的意味

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川嶋:日本語の「触れる」という言葉には、直接触れるというだけでなく、心に触れるという意味もあります。心をこめた手で触られれば、相手は共感されている、支えられている、励まされていると感じ、苦痛や緊張が緩和され、心拍数や血圧が下がったりすることがあります。「触れる」効果にはエビデンスがあるのです。肌に触れることで愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌され、リラックスするのです。この「手を触れる」ことを、見直してほしいと思っています。

医療機器が示す数値でしか患者さんの苦しさがはかれない看護師が増えているのは、危機的状況です。看護の基本は苦痛の緩和です。それは、がんの痛みをモルヒネで調整することばかりではない。看護師が患者さんのそばにいてマッサージをし、足浴を行うことで苦痛を緩和することができ、そうやって生活の質を高めるケアこそ、看護師が独自にやらなければならないのです。

 

*宗教による信仰治療、たとえば天理教の「おさずけ」の意味を考えさせられます。「医療がますます機械化されるにつれて、看護は、ますます『心遣い』の問題になるだろう」(中井久夫)。