2021-01-01から1年間の記事一覧

認知行動療法の健康保険適用の拡大

日本の厚生労働省は、多くの大学で研究班を組織して認知行動療法の研究が進められ、その成果を踏まえて、2010年よりうつ病(うつ病等の気分障害)に対して認知行動療法は一定の要件を満たせば保険診療で治療を受けることができるようになりました。2016年には…

現代人の孤独

自分ではない誰か。目の前にいて自分を見つめてくれる誰か。自分がいなくなってもその場に在りつづけ、自分と同じように世界を眺め語り死んでいくであろうそんな<他人>を信じることは、きっとそのまま私たちの生きる世界を信じることであり、それが唯一の…

オープン・ダイアローグ

むろん家族でなくても、聞き役にまわっていると患者さんが自分で結論を出すことが多いと言うことです。その結論はしばしば当たっているし、当たっていなくてもそこから出発して修正していけば良いのであって、出発点にはなるんですね。ずるいかもしれません…

治りにくいアルコール依存症患者

妻子友人がすべて見放し、一切の趣味がなく、飲むものもアルコールであればよく、ひいき力士も野球チームもなく、ひたすら意識混濁をめざす場合である。これは、ハト派的にもタカ派的にも治療が難しい(中井久夫「慢性アルコール中毒者への一接近法(要約)」『…

宮沢賢治の詩の音楽化

知る人ぞ知るシンガソングライター、小田朋美が宮沢賢治の詩に音楽をつけたものです。アルバム『シャーマン狩り』より。「風が吹く、風が吹く」https://www.youtube.com/watch?v=wnf7zRenUNM「ぬすびと」https://www.youtube.com/watch?v=u_Sj3zoK1kg

エリック・ホッファーの文章

無為を余儀なくされた有能な人間の集団ほど爆発しやすいものはない。そのような集団は過激主義や不寛容の温床になりやすく、いかに不合理で邪悪であろうとも、壮大な行動を約束してくれるならどんなイデオロギー的改宗でも受け容れてしまいやすいのだ(エリ…

高学歴者の宗教心理

「無為を余儀なくされた有能な人間の集団ほど爆発しやすいものはない。そのような集団は過激主義や不寛容の温床になりやすく、いかに不合理で邪悪であろうとも、壮大な行動を約束してくれるならどんなイデオロギー的改宗でも受け容れてしまいやすいのだ」(…

神は死せどもたましい死なず

授業中に学生たちに「あるかもしれない」「絶対にない」の2択で質問したら、「たましい」は、ほぼ全員が「あるかもしれない」と回答しました。宗教が「軽く」(山中弘)なっていくなかでー私は、「世俗化論はもう賞味切れ」という山中氏に賛成ですー最後まで絶…

自助グループと認知行動療法

そうした治療プログラム(自助グループー熊田注)は、あえて料理にたとえるならば、間違いなく高級フレンチであり、高級懐石料理であると思います。それに比べれば、私たちのスマープ(認知行動療法)など、ファストフードか、せいぜいのところチェーン店のファ…

依存症と「きっちりしすぎる」性格

筆者(笠原嘉)もまた、現代が強迫パーソナリティの時代だという認識を本書の筆者(サルズマン)と同じくしている。今日の日本の青少年の神経症的登校拒否、やせ症、ヤング・アダルトのアパシー的退却症、そして実直な中年者の軽症うつ病、ときにはアルコール症…

日本の自助グループと宗教体験

AA(アルコホーリクス・アノニマス)発足のきっかけの一つは、金持ちの患者がユングに「私たちには治せないが、宗教的体験をすれば治ることがあるので、宗教に近づいて暮らしなさい」とアドバイスされたことです。キリスト教的文脈から離れた日本の自助グルー…

神経症

ある意味では、神経症なんて「ふと思いつく」と「託す」との合体なのです。だからお手軽であることこのうえない。にもかかわらず当人にとってはシリアスかつ、それはつらいところがこの病気の特徴です。しかもそうしたメカニズムが当人には分からない。独り…

転換性障害の信仰治療-天理教の事例から-

転換性障害(昔でいうヒステリー)は、依存症(使用障害)と同じで、基本的には薬物療法が効かないので、現代の精神科医には敬遠されがちだそうです。治療法は、環境調整と心理療法しかありません。下記の逸話のように、教祖が信者を直接呼び出して、「親神様は…

逸話一六七 人救(たす)けたら

一六七 人救(たす)けたら 加見兵四郎(後の天理教東海大教会初代会長-熊田注)は、明治一八年九月一日、当時一三才の長女きみが、突然、両眼がほとんど見えなくなり、同年一〇月七日から、兵四郎もまた目のお手入れを頂き、目が見えぬようになったので、…

仏だけ徒歩ー氷河期世代と現世離脱的宗教性ー

東京事変の新曲「仏だけ徒歩」です。 https://www.youtube.com/watch?v=wpgu6pac3Hk 氷河期世代(アラフォー)への応援歌です。 https://www.youtube.com/watch?v=VVHfQ4F7B3E アルバム『総合』には、「原罪と福音」という曲も収録されます。経済成長と縁の…

天理教教祖と妾制度

天理教教祖伝の異本を読んでいたら、教祖の夫・善兵衛が下女と浮気したときに、教祖が「他の女子も好くような夫でよかった」と言ったという伝承が書かれていました。男性信者の妄想には、限りがないようです。戦前の妾制度の感覚だったのでしょう。天理教愛…

日本の宗教の信仰治療について-天理教の事例から-

『愛知学院大学文学部紀要』51号、2022年3月刊行<題名>日本の宗教における信仰治療について-天理教の事例から- <著者>熊田一雄 <要旨> 本論の目的は、「人たすけたら我が身たすかる」という天理教の教えを検討することにある。私はかつて天理教のこ…

心と体の境界

かつて、100年前には人間の心と体の境界は、今よりも低かったのではないでしょうか? 今でも、子供の心と体の境界は、大人よりも低いことがよく知られています。近代化が進行する以前の日本人の心と体の境界も、やはり今より低かったのではないでしょうか。心…

石原慎太郎と「男らしい」国家

女の意地というのはあまり聞かないし、女にも女なりの心意気というものはあるのだろうが、意地を構えての突っ張りはやはり男ならではのものだろう。傍から見れば何を馬鹿なと言われる所行はやはり男の世界の物事だろう。それで損をしても心の隅である納得が…

新渡戸稲造と牧口常三郎

私は、当時は弱小団体に過ぎなかった創価教育学会の牧口常三郎が官憲にマークされたのは、「新渡戸稲造に連なる平和思想の団体」と思われたからではないか、と予想しています。

ジェンダー論は実学

私の春学期の授業「ジェンダー論入門」における授業アンケートの自由記述欄から。 この授業は今までの自分を振り返ることが多かったなと思いました。そこからこの授業へ入り込めたから、分かりやすかったです。 新しいことを学べた、わかりやすかった。 これ…

天理教教祖と男性信者の妄想

最近知ったのですが、天理教教祖伝の異本のなかに、夫・善兵衛の浮気に際して、みきが「他の女子も好くような夫でよかった」と言ったという記述があり、男性信者のメイル・ファンタジーにはキリがないなあと思いました。

「手引き」と「ためし」

手引きというのは、まあ言うてみるなら、何も知らない子供が、目先のことにとらわれて、知らず識らずの間に危うい道に陥るのを、こちらの安心な道に来いと、手を引いてくださるようなもの、ためしというのは、親から安心の道を教えられたら、その通り実践し…

病と「手引き/ためし」ー天理教の事例からー

一六七 人救(たす)けたら 加見兵四郎(後の天理教東海大教会初代会長)は、明治一八年九月一日、当時一三才の長女きみが、突然、両眼がほとんど見えなくなり、同年一〇月七日から、兵四郎もまた目のお手入れを頂き、目が見えぬようになったので、十一月一…

日本の新宗教と「ダメでもともと医学」ー天理教の事例ー

日本の新宗教の中には、入信者をいきなり布教に出す、または昔はそうしていた、というタイプの教団があります。従来、こうした信仰指導は教勢の拡大を目指す教団エゴの表れとして語られてきました。私は、そうした姿勢に教団エゴの表れという側面があること…

内観療法の授業で救われた話

春学期宗教心理学を通してみて、まず初めに(ママ)知った内観という内観療法にはとても驚きました。内観療法には人間関係の不和・非行・不登行(ママ)・うつ・アルコール依存、心身症などといった問題の改善に効果があるというのを知った。もちろん簡単に…

「余裕」のない近代日本の文化

とにかく、余裕を持つことが、そうとう「功成り名遂げた」人でないと嫉妬されるという文化は、皆があまり余裕のない文化で、私などが平凡な余裕論を患者や家族にしなければならなくなるのはそのためだろう。万一自殺でもすれば「それほど思い詰めていたのな…

原初的な世界としての泥海

http://leonocusto.blog66.fc2.com/blog-entry-4259.html?sp 「終末観と世直し」より:「大洪水は山津波、川津波を起こし、世界を泥海に化してしまう。それは自然界の破局であり、終末を予測させる光景となる。」「天理教の開祖中山みきの「おふでさき」には…

「おふでさき」と「人たすけたら我が身たすかる」

https://www.tenrikyo.or.jp/yoboku/nioigake/ 人をたすけて、わが身たすかる 「おふでさき」に、「しんぢつにたすけ一ぢよの心なら なにゆハいでもしかとうけとる」(第三号38)、「わかるよふむねのうちよりしやんせよ 人たすけたらわがみたすかる」(第三…

ポストモダンの天理教

天理教教祖の活動は、心なおし・病気なおし・世なおしの三本柱からなっていたと思います。そのうち世なおしは、教祖の死後まもなく、国家神道体制に飲み込まれて消えました。病気なおしも、現在では近代医学に遠慮して、引っ込めています。現在では、心なお…