高学歴者の宗教心理

    「無為を余儀なくされた有能な人間の集団ほど爆発しやすいものはない。そのような集団は過激主義や不寛容の温床になりやすく、いかに不合理で邪悪であろうとも、壮大な行動を約束してくれるならどんなイデオロギー的改宗でも受け容れてしまいやすいのだ」(エリック・ホッファー『現代という時代の気質』ちくま学芸文庫、2015年(原著1966年)、p36)。

 オウム真理教の高学歴エリートの幹部たちは、「ものすごいエリートなのに引っかかった」のではなく、「ものすごいエリートだからこそ、引っかかった」と説明すると、私の学生たちは、納得します。特に、「科学技術庁長官」だった村井秀夫の場合がそうでしょう。ひきこもり研究の先駆者である精神科医・笠原嘉も指摘していましたが、現代日本社会には、「高学歴エリートの心理学」が必要なのではないでしょうか。

    高学歴エリート幹部たちが教祖に引っかかり、さらに彼らが一般信者を幻惑して引っ張っていくという構図は、幸福の科学にも指摘できるかもしれません。もし『虚業教団』(関谷晧元(著)、現代書林、1993年)の記述を信じれば、エリート幹部たちは、「こういうことをすれば、どのくらい引っかかるか」と会話していたそうです。