合理主義・生命主義・グノーシス

 人文書院は、デカルト流の心身二元論に反発して、「心から体を治す」民間精神療法の大正期における流行に共鳴する形で出発しました。民間精神療法の流行は、その後、新宗教に吸収されて、生命主義的救済観となりました。他方、人文書院の後継者たちは、創始者に反発する形で、戦後サルトルやヘッセの翻訳に力を入れました。こちらの流れは、1990年代以降、大衆化して、グノーシス主義的なものとなりました。人文書院という 一出版社を舞台として、近代合理主義・生命主義的救済観・グノーシス主義、言い換えれば、近代合理主義・救済宗教・新霊性文化の三者のせめぎ合いが見られます。