賀川豊彦と「キリストの侠気」
「生協の父」としても知られる、近代日本を代表するキリスト教社会運動家の賀川豊彦(1888-1960) は、昭和天皇崇拝と部落差別発言の問題のせいか、日本のキリスト教神学者の間での評価はいまひとつのようです。しかし、賀川が大きな社会的功績を残したことは否めません。賀川は著書『キリストの愛読書・イザヤ書の瞑想』(1948)の中で、直截に「キリストの侠気」という表現を用いています。日本のキリスト教神学者に言わせれば、なんだこれは、ということになるのでしょうが、近代の日本人がキリスト教を受容するときには、やはり近世の侠気の伝統に結びつけるようです。近現代日本には、新渡戸稲造・賀川豊彦・中村哲(任侠の大親分の孫)という「任侠キリスト教」の系譜があると思います。