象徴天皇制とクエーカー人脈

「象徴天皇」という言葉を読み解いていくと、GHQに押しつけられたのではなく、国際的リベラリスト昭和天皇の信頼が篤く、クエーカー(キリスト教の一派で絶対的平和主義で知られる)でもあった新渡戸稲造にたどり着く。拓殖大学名誉教授の草原克豪はいう。
「新渡戸は昭和六年に英国で出版された英文『日本』の中で、<天皇は国民の代表であり、国民統合の象徴である>と述べています。その三十一年前にアメリカで出版された名著『武士道』においても、天皇が<国民的統一の象徴>(原文ではSymbol of National Unity)であることを強調していました。アメリカはこうした新渡戸の天皇観を参考にしながら、戦後の象徴天皇制の基礎作りをしたものと思われます」


 皇室を支えたクエーカー人脈


 現憲法に大きな影響を与えたマッカーサーの秘書官ボナ・フェラーズは新渡戸と同じクエーカーであり、当然新渡戸の本は読んでいたはずである。ちなみに、天皇の人格形成に影響を与えたといわれるバイニングもクエーカーである(奥野修司天皇皇后両陛下はなぜ軽井沢を愛されるのか」『文藝春秋』2014年9月号、文藝春秋社、2014年、p151)。


*現・平成天皇の家庭教師(英語教師)にバイニング夫人を指名したのは、キリスト教でも「絶対に教義の押しつけはしない」というクエーカー派の特徴に日本サイドが目をつけたからでしょう。しかし、近代日本の宗教史におけるクエーカー派の影響は、確かに再検討に値すると思います。


「明治日本の宗教者とエートスとしての<侠>」
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20080910/p1