アダルトチルドレンとグノーシス的なるもの

  雨宮処凛の小説「EXIT」(新潮社、2003年)を読みました。本のオビには、「新潮ケータイ文庫アクセス数No.1」と書いてあります。自傷系サイトで知り合った若者たちの自助グループ(「ジジョ」)が、暴走して、中心メンバーが自殺することによって解散するという物語です。この自助グループのメンバーたちは「神」を信じておらず、「アダルトチルドレングノーシス的なるもの」に極めて親和性の高い小説です。

恵(熊田註;グループの中心メンバー)の掲示板の人たちは、たいていが親に原因を求め、そうして呪詛の言葉を吐いていた(p144)。

(熊田註;自助グループのミーティングにおいて)
そうして私たちはパンフレットの最後を読み上げた。
「私たちは神を信じます。」
その言葉をはじめて聞いた時、思わず椅子からずり落ちそうになった。
神様なんているはずがない。そのことはみんなの腕の傷(熊田註;リストカットの跡)を見れば何よりも明らかだったし、誰もそんなもの最初から信じてなかった(p133)。

(熊田註;中心メンバーが自殺したとき)
「信じられません。神様なんていない。許せない。そうして恵ちゃんがこんなことにならなきゃいけないの?」(p189)

(熊田註;中心メンバーの自殺後、非メンバーによってサイトに書き込まれた文章)
「天国で楽しくやっています。私はこれで良かったんだよ。こんなくだらない世界から一歩抜けてドロップアウトして、ホントにホントによかったんだよ」(p222)

 現代日本の「神」を信じていないアダルトチルドレンの感性が、グノーシス的なるものに極めて親和性が高いことをよく表している小説です。