J・ホラーにおける性差別

 J・ホラー「呪怨1・2」を見た感想です。情報機器を小道具に使った演出のうまさは認めますが、私の感想は、恐怖よりも怒りが先に立つものでした。
 夫に惨殺された妻が地縛霊となり、幽霊屋敷に関わった人間を次々に呪い殺していく、というストーリーですが、DVの問題意識があまりにも低い。DVはカテゴリーとしての男女間に生じる構造的暴力なのですから、この妻の怨霊が殺してもいいのは、夫と(まず夫を呪い殺したことは暗示されている)、せいぜいがDVオヤジ、いくら広げても成人男性だけでしょう。
 それなのに、この女性の怨霊は、女子どもでも容赦なく呪い殺していく。まるで無差別テロです。女性の怨霊が、残された5歳にもなる自分の子どもを「連れて行った」ことが暗示されているのも気にくわない。子どもは母親の所有物ではなく、独立した一人格です。さらに、自分の子どもの霊に、犠牲者を幽霊屋敷に関わらせるためのポン引きのような真似をさせていることも気にくわない。自分の恨みは自分で晴らせばいいのであって、子どもに自分の無差別テロの片棒を担がせるのは人倫にもとります。
 この程度のホラーが日米(アメリカの場合レメイク版・私は未見)で大受けしたのは、やはりDV問題についての社会の意識がまだまだ低いからでしょう。DV問題についての啓発がもっともっと必要です。こんな差別的な、「女性は業が深い」というスタレオタイプを反復する女性(怨霊)表象に、どうして日本のフェミニストは怒らないのでしょうか?