日本の格差問題をめぐって

 日本は無名の人つまり「常在菌的な人」のおかげで何とかやれてきた。外国人が日本人を見直すのは無名の人に出会った時である。格差はどうしても生じるが「等しからざるを憂うる」政治によって辛うじて釣り合いがとれる。これを政治が真っ先に忘れてどうするのか。
 ヒトの歴史をいちばんおおもとから辿ってみて、「格差社会」がヒトがヒトになるいちばん古い時代の問題と似ていることに気づいた。これを補うためにヒトが発達させてきた良きものの多くが危うくなっていないか(中井久夫「ヒトの歴史と格差社会」『日時計の影』2008年(初出2006年)、p193)。


*温厚な中井久夫氏には珍しい激しい語調の文章です。「無名の人」を育てる二流大学の教師には、励ましになる言葉です。


「明治日本の宗教者とエートスとしての<侠>」
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20080910/p1