科学者の精神健康について

(前略)科学や哲学は、どうしても物事を一般化せずにおれぬ者の精神健康のために発明されたのかもしれない。ついでにいうと、サリヴァンのいうように、人間は真の満足に達すれば深追いはせぬものであり、昇華は代用満足で真の満足ではないからいくらでも追求するのだというのは、たいていの場合当っているが、科学技術も、真の満足を与えないからどんどん進歩して今日に至ったのではないか。学者が精神健康的に多少とも偏っているのは当然であるとも言える(中井久夫「精神健康の基準について」『「つながり」の精神病理』ちくま学芸文庫、2012年(初出1985年)、p244)。


*聴くべき忠告だと思います。サリヴァンは、さしずめ「精神医学のニーチェ」ですね。