思春期の身体変化の早期化と精神衛生
また、思春期の身体変化の早期化がある。この50年にそれは14〜16歳から10〜12歳へとなった。前思春期の友情(例えば宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』におけるジョバンニとカンパネルラの関係ー熊田注)がいざというときの支えになることは古くはサリヴァン(薬物療法がなかった時代に統合失調症の治療に優れていたアメリカの精神科医)が唱え最近新たに支持されているが、前思春期は消滅しつつある。孤独に耐える能力は、友情とつりあって重要であるが、これも危うくなっている。
思春期の身体変化の早期化は1920年代より全世界的におこっており、原因は不明である。知性はこれに並行して早熟化していないので、知性が性を迎えうつのではなく、性のほうが知性より早く目ざめるという事態になった。これは思春期の人にとって大きな負担であると思われる(中井久夫+山口直彦『看護のための精神医学/第2版』医学書院、2004年、pp195-196)。
*現代日本における「ひきこもり」の急増や、神戸連続児童殺傷事件における「少年A」の性的サディズムを考えるうえで、示唆的な意見です。
中井久夫氏による「少年A」の精神鑑定
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20150206/p2