ジョバンニとカムパネルラ

 アメリカの精神科医、H・S・サリヴァンが、人間の成長過程における「純粋な愛の体験」として重視した、「前(=性が入ってくる以前の)思春期における親友関係」を日本のフィクションに探し求めれば、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』における「主人公ジョバンニと親友カンパネルラ」の関係がそうでしょう。精神科医中井久夫氏が指摘するように、先進国では、若者の「性(身体的成熟)体験の早期化」によって、この発達段階が危うくなっています。宮沢賢治ブームの原因の一端は、この辺にも求められるでしょう。