「世界に一つだけの花」と競争選抜社会

 私は、講義で現代日本の競争選抜社会を説明する際に、SMAPの楽曲「世界に一つだけの花」(2003年)を教材に使います。この曲は、依然として国民的人気を維持しています。竹内洋島薗進的な言い方をすれば、明治30年代から続く「修養的立身出世主義」(慰めの哲学)ー「ナンバーワンにならなくてもいい」ーと、1970年代から続く「自己実現的立身出世主義」(個性に即した自己実現)ー「もともと特別なオンリーワン」「その花を咲かせることだけに一生懸命になればいい」ーを見事にクロスさせた楽曲です。現代日本の競争選抜社会を「修養的=自己実現的立身出世主義」と形容してもいいと思います。「孤独な競争を強いる社会」といってもいいでしょう。
 日本の競争社会が、絶えず「慰めの哲学」という「冷却水」を供給する必要がある位「加熱」していることは、確かだと思います。英米モデルの近代化路線には、もう限界がきているように思います。だから私は「民衆宗教研究」をしているのですが、なかなか理解されません。