壊れたホットプレート

 浜 景気・不景気の問題ではないですよね。本当の問題は“豊かさのなかの貧困問題”なのだと思います。都会で働く人々の中には、非正規雇用ワーキングプアという人が多い。その割合が、先進国としてはあまりに高すぎる。厚労省が七月に発表した国民生活基礎調査で、子どもの貧困率は一六・三%でした。この豊かな国で、子どもの六人に一人が貧困層なのです。
 私はこの状況を“壊れたホットプレート”と呼んでいます。一部はすぐに食材に熱が通って下手すれば焦げるが、別の部分はまったく熱が通らなくて食材が凍ったまま。しかし、この“壊れたホットプレート”論を展開すると、一部の論者たちからは「トリクルダウン理論を知らないのか?」という声が出てきそうです。
(中略)
これがうまくいかないことは、レーガノミクスをみてもサッチャリズムをみても明らかなんですけどね。
 藻谷 日本はさらに極端で、株価が二倍に上下しても、小売販売額はびくとも動かないのです。(中略)株価に「資産効果」が伴わないので、トリクルダウンなど夢のまた夢です(浜矩子「浜矩子・連続対談・人口減少をどう乗り越えるか/藻谷浩介/お金がなくても地方は豊かだ」『文藝春秋』2014年9月号、p130)。


*“壊れたホットプレート”とは上手い表現だと思います。