ジャズピアニストと宗教

かつてのジャズピアノの新・御三家、キース・ジャレット、ハービー・ハンコック、チック・コリアは、いずれもキリスト教ではなく、新宗教の信者でした。順に、グルジェフ主義者、創価学会インターナショナル、サイエントロジー。現在のブラッド・メルドーは…

現代宗教と「ゆとり」の文化

-「心に余裕(ヒマ)のある生物、なんてすばらしい!」(岩明均『寄生獣』) -「人間には、善人と悪人がいるのではなく、ゆとりのある人とゆとりのない人がいるのである」(中井久夫) 仏教徒の方々は共通して落ちついていると記載されていました。心のよりどこ…

藤井風「帰ろう」と死生観

ミュージシャンの藤井風は、サイババ2世だそうです。父親がサイババに傾倒しており、本人も信者です。ベジタリアンです。作品にも宗教色が濃厚です。アルバム名も、サイババの言葉からとっています(“Help Ever Hurt Never” “Love All Serve All”)。ネット上…

母親のエゴの犠牲になった娘

漫画家の高橋留美子が、「これまで読んだ漫画の中で、一番強かったのは、山岸凉子の『汐の声』」と発言しているそうです。私も高橋留美子と同じ意見です。山岸涼子の『汐の声』のあらすじについては、次のブログをご覧ください。 https://plaza.rakuten.co.j…

「器官なき身体」とグノーシス主義

哲学者ジル・ドゥルーズが、自身の哲学のキーワードとして用いる、作家アントナン・アルトーが言い出した「器官なき身体」は、批評家スーザン・ソンタグが指摘する「グノーシス主義者としてのアルトー」が、邪悪な創造神の支配する「肉の獄」に取り込まれる…

死に向けて

私の父は、アルコール依存症から多臓器不全で62歳で若死しました。しかし、私は6年前に断酒に成功したので、もう少し長生きすると思います。私の母は、3回ガンを発病し、3回目のガン(上顎ガン)で、82歳で死にました。私もおそらく最後はガンで死ぬのではない…

ヘンジニアとして

ヘンジニアとは、ノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中さんが自称して使っていた言葉です。田中さんは、管理職に昇進しないか、という会社の誘いを断って、「生涯ヘンジニアとして生きます」と宣言していました。私の父は、若くして社長賞を受賞するよ…

ポジティブ心理学批判

本の紹介です。カバナス&イルーズ『ハッピークラシーー「幸せ」願望に支配される日常』みすず書房、2022年メディアや市場に「幸せ」言説が溢れるようになったのは、ポジティブ心理学の影響が大きい。それは「幸せの科学」であるとされてきた。レジリエントで…

賀川豊彦と「キリストの侠気」

「生協の父」としても知られる、近代日本を代表するキリスト教社会運動家の賀川豊彦(1888-1960) は、昭和天皇崇拝と部落差別発言の問題のせいか、日本のキリスト教神学者の間での評価はいまひとつのようです。しかし、賀川が大きな社会的功績を残したことは…

オウム真理教事件の受容

オウム真理教のポアの教えが有名になったのは、人間を人間より少し高い立場から扱う人々ー教師・医師・宗教家のような「先生」商売の人たちーは、単なる攻撃性を大義によって正当化することがある、という人々の日常経験を想起させたからでしょう。それに対…

昭和天皇のカリスマ性

故・中井久夫氏は、昭和天皇の甲高い声を評して、「いつも緊張している声」と形容していました。また、昭和天皇の極度の風呂嫌いについて、「自分にリラックスを許さなかったのではないか」と言っています。そういうところに、カリスマ性があったのだと思い…

救えないなら生まないで

21世紀前半の日本で、「グノーシス主義との対話」は継続されているようです。https://www.youtube.com/watch?v=ZvwdDxncn70

金光教と転換性障害

http://www.konkokyo.or.jp/undou/aiyokakeyo/movement/movement.htmlより転載 私たちが普段は当たり前のように思っていることでも、当たり前でないことに気づかされ、あらためて神様とのつながりを感じるきっかけに、病気や事故があります。 ある主婦の方が…

イエスと「足を洗う」行為

イエスは、十字架刑になる前日にも、弟子たちの足を洗ってやり、「私の死後も、お互いに足を洗い合うように」と伝えました。足を洗うという行為は、「相手に対して謙譲であれ」という意味と同時に、「心の余裕(ゆとり)を忘れるな」という意味もあったと思い…

学校社会の勝ち組としての教育者

https://synodos.jp/opinion/society/19993/ また、こう言うと学校の先生批判になってしまいますが、やはり子どもの時に学校で良い体験をした人じゃないと先生にはならないという面があると思うんですよね。学生の頃の記憶を思い出したくないような人は、自…

おんな・いのち・よそもの

日本の1970年代以降の第二波フェミニズムは、思想的には「80年代生命主義」の一種と見ることもできます。しかし、田中美津さんの著作『この星は、私の星じゃない』(2019)はその「よそもの」感覚(異邦人感覚)によって、むしろグノーシス主義に近いと思います。

大衆文化とグノーシス主義的なもの

現代日本の大衆文化におけるグノーシス主義的なものを解説するときには、いつもこの動画を見せています。家入レオの『サブリナ』のテーマは援助交際だそうです。動画では、「牢獄としての世界」、「悪にまみれていく自分」、「脱出のための鍵」、「垣間見え…

君たちはどう生きるか

宮崎駿監督の新作は、吉野源三郎原作「漫画版 君たちはどう生きるか」を踏まえたものだそうです。少年が、無職の年若いおじさんとの会話を通して成長する小説です。私が重要性を強調した「無用者との斜めの関係」が注目されるでしょう。 https://books.rakut…

イギリス社会と認知行動療法

東畑開人さんから聞いたのですが、イギリスで認知行動療法が発達したのは、新自由主義的政策を進めたサッチャーが、精神科医を嫌って権力から外そうとしたからだそうです。さもありなん、という話です。

旧統一教会報道

オウム真理教事件の際に、事件を教団の根本教義の聖無頓着とその受容を可能にした現代日本社会における人間関係の希薄化にまで掘り下げた報道は出ませんでした。旧統一教会の問題に関しても、日韓の歴史清算の問題に掘り下げた報道は出ないようです。

天理教とジェンダー不平等

天理教婦人会河原町支部・あゆむ会が発行している「YOME-YOME」ーこの家父長制丸出しのタイトル!ーは、なんと1万部以上出ているそうです。天理教のジェンダー平等への道は、遠いようです。 https://note.com/be1960/n/ne0ed6af8ae97

合理主義・生命主義・グノーシス

人文書院は、デカルト流の心身二元論に反発して、「心から体を治す」民間精神療法の大正期における流行に共鳴する形で出発しました。民間精神療法の流行は、その後、新宗教に吸収されて、生命主義的救済観となりました。他方、人文書院の後継者たちは…

朝日新聞における宗教とジェンダー

https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S15483167.html 論壇時評)新興宗教と女性 「信仰」通し搾取、社会の縮図 東京大学大学院教授・林香里 朝日新聞の昨日の「宗教とジェンダー」に関する記事はひどかった。まず、「新興宗教」というのは差別用語で用…

村上春樹と実存主義

村上 ぼく、一年半ばかり前から、半年間位フランス語をやって、カミュの『異邦人』を読んだんですよ。あれ面白かったけど、小説としてはそれほど面白くないんですけどね、でも一種のメッセージでしょう、あれ。まあ一種の寓話ですね。でも、ああいう小説はい…

無意識の同性愛嫌悪

「宗教とジェンダー」の講義で、ニューギニアのサンビア族における、少年が「男らしい戦士」になるために、先輩戦士の精液を飲む(「授乳」してもらう」)という事例の話を紹介したら、男子学生から「気持ち悪い」という反応が頻出しました。「無意識の同性愛…

子どもの遊びの貧困化

この「遊び」も、昔と今では大分変わってきています。昔の子供の遊び、例えば「鬼ごっこ」には、その中に「体を動かす」「自然と接する」「質の良い人間関係」が含まれています。一方、今の子どもの代表的な「遊び」である。コンピューターゲームには、三要…

今年度の達成

このブログ、今日10万アクセスに到達しました。今年度の私の最大の達成は、単著を出版したことではなく、1.断酒生活が6年目に突入した、2.体重を10キログラム落とした、という健康上の達成でしょう。

複雑性PTSDからの回復者

神田橋 患者さんに励ましの言葉として常用しているのは、世の中に役に立たない経験なんていうのはひとつもないよ。それが先程のディスカッションに対する答えです。絶対、大きなトラウマを乗り越えた人はみんなすばらしい人になりますよ。だから、それが楽し…

複雑性PTSDと人間の自然回復力

なお人間の自然回復力を促す四因子として「①からだを動かす、②自然を楽しむ、③良い人間関係を味わう(相手が動物でも可)、④遊ぶ」が知られています。この四因子には、敵対・混乱モードから友好・安心モードへの移行をサポートする作用があります(原田誠一「私…

悪の凡庸さ

葉梨(元)法務大臣の「死刑のハンコを押すだけ」発言は、アーレントがナチスのアイヒマンを論じた「悪の凡庸さ」を連想させます。もっとも、現実のアイヒマンは、平凡な役人ではなかったようですが。葉梨氏は、死刑制度について真剣に考えた経験がないようで…