母親のエゴの犠牲になった娘

 漫画家の高橋留美子が、「これまで読んだ漫画の中で、一番強かったのは、山岸凉子の『汐の声』」と発言しているそうです。私も高橋留美子と同じ意見です。山岸涼子の『汐の声』のあらすじについては、次のブログをご覧ください。

https://plaza.rakuten.co.jp/sylfaen20150/diary/200709210000/

 やり手のステージママの母親に成長を止める薬を飲まされて小人になってしまって、成人後、母親を絞殺した元・子役スターの娘の怨霊が漫画のテーマです。「子供の体の上に、奇怪に年老いた大人の顔が乗っている女性」の絵は、私には最高に怖いです。

 私がこのブログの記事に追加したいのは、ジェンダー論的な視点です。このホラーのテーマは「親のエゴの犠牲になった子供」と、ブログの作者は書いています。しかし、より正確に言えば、「母親のエゴの犠牲になった娘」が、作品のテーマでしょう。少なくとも、現代の日本人にとっては、「母性を捨てた女性」が、いかに大きな恐怖を喚起するか、ということです。逆に言えば、現代の日本人は、「女性の母性(養育性)」をいかに当然視しているか、ということでしょう。