のび太としずかちゃんについての考察

 しずかちゃんは一見優等生のようだが、しょっちゅうオフロのはいっている。よごれを病的に気にする不潔恐怖の持主かもしれない。あの家庭は、たいへんキッチリズムの家庭だ。しずかちゃんは息が詰まるので、浴室でしかくつろげないのかもしれない。のび太の家とは対照的で、のび太の母親はガミガミいうが、抜けているところがあり、父はとぼけた人物である。しずかちゃんがのび太にひかれるのも、ふしぎではないわけだ。また、彼女には同性の友人がいない。いささかオテンバであるわけだ。オテンバは、のび太のような「女の腐ったような男の子」と一緒にいて、お互いに得るところがあるらしい。そういう組み合わせが結構ある。のび太は単に同情されているだけではない。しかし、のび太のような子は、たまに成功した時「のび太さん、すてきだわ」といってくれるしずかちゃんのような子をいつも空想しているものだ(中井久夫「漫画「どらえもん」について」『「つながり」の精神病理』ちくま学芸文庫、2011年(執筆1987年)、pp.131-132)。


*「オテンバは、のび太のような「女の腐ったような男の子」と一緒にいて、お互いに得るところがあるらしい。そういう組み合わせが結構ある。」というのは、ジェンダー論の観点からすれば面白い指摘です。「女の腐ったような」というのは明らかに女性差別的な表現ですが、「男らしくない男」と「女らしくない女」は、相性がいいのでしょう。