中井久夫氏とカフカ
ちょうどそのころカフカ全集が出始めたころでした。私は一時カフカ全集ばかり読んでいた時期がありました。まるで自分のことが書いてあるような気がしたことがあります。そのころ同人雑誌にカフカ論を載せたのです。これは私が書いた評論では割と早いほうのものですが、この雑誌は全くなくなっております。まあ、なくなって幸いなようなものでありますが・・・・・・(中井久夫「私に影響を与えた人たちのことなど」『精神科医がものを書くとき』ちくま学芸文庫、2009年(初出1991年)、p47)。
*私の文学的趣味は「フランツ・カフカ=安部公房」ラインで、一番好きな小説はカフカの「断食芸人」です。カフカは、先取の気性に富んだ能吏でした。安部公房も、趣味で国際発明賞を受賞しています。私は、もちろん中井久夫さんのような(カフカや安部公房のような)天才ではありませんが、中井さんのいう「S(統合失調症)親和者」なのだと思います。中井さんのカフカ論、読んでみたかったものです。