内観療法

 これは奈良の一僧侶が編み出したもので、おもに非行少年やアルコール依存症の治療に用いられる。
 患者は壁に面して座り、うしろに屏風をへだてて治療者が座る。患者は、自分の過去をすべて「自分が悪かった」「自分がしてもらった」という観点から述べるように求められる。不十分であると、背後の治療者からやり直しが指示される。ときに「はげまし」の短いことばがかけられる。ある時点に達すると患者は、両親をはじめ周囲の人の深い愛情に気づかず、「逆うらみ」をして迷惑をかけつづけてきたと号泣する。これが転回点である。
 一般に、自分を変えるかわりに周囲に奉仕や犠牲を強要してきた患者である。自分で悩むかわりに他人を悩ますのは「裏返しの神経症」ともいえる。それをもう一度裏返して「神経症」にして治すということができそうである。罪責感に悩む能力、「内面化」の能力を引きだす治療とも表現できる。成功するのは、そういう能力が眠っていた人であるのは当然であろう(中井久夫山口直彦『看護のための精神医学/第2版』医学書院、2004年、p62)。


内観療法の一側面を的確に捉えていると思います。