(前略)憑依は畏怖されるだろう。しかし、いずれにしても周囲は冷淡(インディファレント)ではありえないのである。とくに憑依症候群あるいはそれに近縁の意識変容を伴う症候群は、その経過後において、患者はより安定し確信に満ち、葛藤から自由な人格としてふたたび立ち現れることが少なくない。そして病前の内向性は逆転して、むしろ外向的な人物となりうる。その中には新しい宗教の創始者も見られる(中井久夫『治療文化論ー精神医学的再構築の試み』岩波同時代ライブラリー、1990年、p39)。
*「陽気ぐらし」を説いた天理教教祖の、「わしは若い頃は陰気な者じゃった」という述懐が想起されます。