自殺防止ボランティアと相互ケア

 ボランティアがストレスをためこまないようにするコツは、大変辛い相談を受けたとき、そばにいるボランティアに聴いてもらうことなのです。
 話せる相手は自殺防止センターで働くボランティアだけです。相談者の秘密を守らなければならないので、家族や外部の人には話してはいけないのです。
 ですから、辛い話を聴いたときは、センター内でできるだけ早く、その辛い話を吐き出すことが大切なのです。私も大変重い相談を受けたときは、センターに来る人来る人に聴いてもらいます。
 もう一つは、電話相談中にしっかり相手と話し合うことです。いい加減な聴き方をしてしまい、電話が終わってから「ああ言えばよかったのでは?」などと思い返すと、気持ちが残ってストレスになるのです。
 この場合も一人で抱え込まないで、周りのボランティアやリーダーと呼ばれる人たちに聴いてもらって整理しておくことが、この活動を続けていく秘訣でしょう。
 電話の向こうの人に対してケアすることと同じように、ボランティアがお互いにケアしあうことがとても重要なのです。
 私たちはボランティアをビフレンダーと呼んでいますが、ビフレンダーがビフレンディングする大切さを知っています。また、もしある相談が失敗したときは、センター全体でよく考え、整理して次の相談に役立てます。センターは「失敗から学ぶ」を合言葉にして励まし合う使命共同体なのです(西原由記子『自殺する私をどうか止めて』角川書店、2005年、pp.101-102)。


*宗教的な自殺防止ボランティアでは、神仏のような超越者に話を「吸い上げてもらう」のでしょう。