アメリカ人の心の概念の特殊性

 では、比較文化的な見方から、私たちの心の概念についてどのようなことが明らかになるのだろうか。
 欧米人がほかの文化圏に輸出している考え方は、アメリカン・ブランドの超内観的[心的変化や精神状態を口頭で表現しようという考え]な超個人主義が中心になっていることが多い。これらはいまだに、デカルト心身二元論フロイトの意識と無意識の二元論に深く影響されており、個人の健康と集団の健康を切り離して考えようとする自助哲学や、数ある心理療法の学派ともつながっている。脳機能に関する生物医学的かつ科学的な興味深い研究でさえ、心を、その背景となる社会や文化から切り離して扱っている(イーザン・ウォッターズ『クレージー・ライク・アメリカー心の病はいかに輸出されたかー』紀伊國屋書店、2013年(原著2010年)、p302)。


*「脳科学神話」は、現代日本にも広く浸透していると思います。