祈りの意味と薬
薬だって、機械からポトンお処方箋が出てくるより、「効くといいね」とか、「効きますように」と祈りを込めて処方箋を手渡すはうが、ほんとうによく効いてもおかしくないと思う。まず、そのほうがきちんと飲んでくれる確率が高いだろうし、薬の作用を受け入れる気持ちになると思うんだ。薬は、患者が薬の作用を打ち消そうという気持ちだったりすると効くものも効かない。ぼくは、これを「向かい風」と呼んで、今が「追い風」が「向かい風」か、見分けるようにしている。「向かい風」の時は現状維持が既にメリット、良くなったらボーナスだと若い医師に言って、医師の士気を維持しようとしたものだ。「追い風」にする姿勢に医師は努める必要があるな。もちろん、治療法が適切な場合を前提にしてだよ。そういう精神的な影響が大きいのはペットも人間と変わらないと思う
(中井久夫「現代医学はひとつか」『中井久夫集10』みすず書房、2019年(初出2009年)、p301)。
*味わい深い言葉です。