アダルトチルドレンという言葉の功罪

 アダルトチルドレンという言葉の社会的ブームは、とっくに終わっていますが、この言葉は消えたわけではなく、日本社会に確実にある程度定着していると思います。一見学問的心理学の概念のようだが、通俗心理学の概念であり、さらに、ACの「回復」運動は実は宗教(キリスト教)なのだ、ということをちゃんと教えれば、心理学科の女子学生などには、「私はこれだと思った」という学生が今でも多数います。私は、多くの人に自分の親子関係を反省させるきっかけとなったという点で、アダルトチルドレンという言葉が日本社会に定着して基本的にはよかったと思います。だた、精神科医斎藤学氏の著作などを生かじりした心理学科の学生の中には、ACの「回復」運動でいう、「被害者権力」を振り回そうとする人も時々います。「被害者権力」を振り回す人とは、いつまでたっても親に受けた「傷つき」に開き直っているだけで、「生かされている」自分に思いをはせて新しい人間関係の作り方を覚えることによって、自分が霊的(宗教的)に成長しようとしない人のことです。
 アダルトチルドレンという言葉が日本社会に定着した「功」は、多くの人に自分の親子関係を反省させるきっかけとなったことだと思います。「罪」は、この言葉を知った人全体から見れば一部とはいえ、「被害者権力」を振り回す人を生んだことだと思います。罪の部分には、斎藤学氏の言論活動も関係しているのではないでしょうか。