マンガ『岡崎に捧ぐ』について

 WEBサイトで話題になっていた山本さほのマンガ、『岡崎に捧ぐ(1)』(小学館、2015年)が単行本化されました。小学校6年生の女子、主人公の山本さんと親友の女子、岡崎さんの親友関係を、1990年代を舞台に描いたマンガです。このマンガがヒットしたのは、アメリカの精神科医、H・S・サリヴァンが、人間の精神的成長にとって決定的に重要であるとした「前青年期における同性の親友関係」をテーマにしたからでしょう。


自分ではない誰か。
目の前にいて自分を見つめてくれる誰か。
自分がいなくなってもその場に在りつづけ、自分と同じように世界を眺め語り死んでいくであろうそんな<他人>を信じることは、きっとそのまま私たちの生きる世界を信じることであり、それが唯一の<現実>であることを信じることに違いない。
 そんな<他人>に会いたい。
 その出会いの後には、私は決して今の私ではなく、現実は<私の現実>ではない唯一のかけがえのない<現実>となって私の前にひろがるに違いない。
 今<希望>や<救い>を語ることは、そんな出会いを通過することなしにはあり得ないのではないかと、そう思えてなりません。
押井守天野喜孝天使のたまご徳間書店、1985年、pp.154-155)


*「<性>の侵入」がますます早期化して、サリヴァンの重視した「前青年期の親友関係」が怪しくなってきた現代、この押井守氏の言葉や山本さほのマンガに惹かれる若者は多いと思います。