レベッカ『フレンズ』と「同性同年輩者関係」

 レベッカの名曲『フレンズ』(1985年)は、アメリカの精神医学者サリヴァン(1892-1942)のいう、青年期前半に必要な「同性同年輩者」間の「個人的親密さへの欲求」を歌った曲とも解釈できます。


*一九七〇年代アメリカにおける同性愛に対する社会の態度の急変がサリヴァン解禁のひとつの理由であろう(中井久夫アメリカにおけるサリヴァン追認」『サリヴァンアメリカの精神科医みすず書房、2012年(初出1979年)、p37)。エリクソンサリヴァンからの影響を否定するようになった理由のひとつは、当時のアメリカ社会における「ゲイ狩り」だったそうです。



(前略)ちなみにサリヴァンの活躍したのは一九三〇年代から四〇年代で、今日有名なE・H・エリクソンより一時代前である。しかも、エリクソンがどちらかというと青年期後半に重点をおいたのに対して、サリヴァンの青年論の焦点は青年期前半にあった。青年期前半に関しては今のところサリヴァン以上の論はないと私は思う。ここで紹介しておこうと思う所以である。
 サリヴァンによれば、人間が青年期前半に果たすべき肝要な対人関係的課題は同性同年輩者間に一対一の親友関係をつくることだという。(中略)「個人的親密への要求」がはじめて生まれるわけだ。それはすでにして「愛」とよぶにふさわしい。(中略)ここではじめて「二人」が問題になる。(中略)かくてそれまでの自己中心的な視野は一挙にひろがり、小さいながら社会的パースペクティヴの中に自分の場所を獲得する。一見二人だけの小宇宙のようだが、実はそれによってはじめて社会という大宇宙へとつながる(笠原嘉『青年期ー精神病理学からー』中公新書、1977年、pp.22-24)。