コントロールの試みとしての摂食障害

 事例を見るとわかるように、自傷摂食障害の症状とは、経過中、手と手を取り合って消長しています。いずれにも共通しているのは、食行動や自己評価、気分・精神状態をコントロールしようとする試みであるという点です。また、最終的には失敗に終わったとはいえ、おそらく処方薬の不適切な使用や嘔吐にも同様の機能があった可能性があります。
 それにしても、なぜそこまでしてコントロールに執着するのでしょうか?
 私は、自身の臨床経験から、子ども時代に虐待や緊張に満ちた家庭のなかで大人に振り回され、翻弄され、コントロールされてきた経験がある人ほど、「自分でコントロールできる」ことに強くこだわるようになると考えています。同時に、コントロールに執着する人ほど、「自分には何かできることがある」という自信を欠いているという印象を持っています(松本俊彦『自分を傷つけずにはいられないー自傷から回復するためのヒントー』講談社、2015年、p91)。


*家族におけるコントロール・ドラマと摂食障害の関係について、示唆的な指摘です。