自己治療としてのアルコール依存症

 医療者は「好きでなったわけではないのに気の毒だ」と統合失調症の人に少しやさしく、「のまなければ、自制力があればならないのに勝手になりやがって世話をやかせる」とアルコール依存症者にはきびしい。アメリカ精神医学がすでに、アメリカのピューリタリズムを遺伝している。禁酒法をやった国なのである。
 「自己治療を試みて深みにはまった人」とみるほうが当たっていると思う。人間の精神健康維持行動は、男女によって順番は異なるが「酒、たばこ、おしゃべり、買い物」が最上位を占めている。酒のみの意思の弱さを言う人は、タバコ(でもなんでもいいが何か一つ)をやめてみてからにしてほしいと筆者は思う(中井久夫「アルコールによる精神障害」『看護のための精神医学/第2版』医学書院、2004年、p272)。


アルコール依存症に限らず、アディクション(依存症)一般に当てはまることでしょう。