「もつれた毛糸」としての心理的葛藤

 河合隼雄は、どこかで(熊田註;おそらく「芸術療法研究会」か「芸術療法学会」)「治療というものは、もつれた毛糸をほどくようなもので、ふわふわふわふわとやっていれば(ここで手真似)いつの間にかほどけてくるものですな」と語っているが、この直感的治療像には、まとめようという方向とちらばろうという方向とを、ともに無理のない範囲で調和させながら自然に回帰させるという機微が巧みに物語られている(中井久夫「コラージュ私見」『隣の病い』ちくま学芸文庫、2010年(初出1993年)、pp.108-109)。


*ここで中井久夫氏のいう「自然」とは、あくまで「日本的自然」、「おのずから/みずから」(相良亨)の世界でしょうが、その点に制約を加えれば、「もつれた毛糸」とは卓抜な表現だと思います。