精神科医療と処方薬乱用

 本稿では、処方薬依存症と過量服薬という切り口から見えてきた、精神科医療の課題を論じさせていただきました。そのなかで、処方薬乱用の背景には、精神科医と患者の双方に、「薬という<モノ>による苦痛の一時しのぎ」という、いかにも依存症特有の病理があることも指摘させていただきました。
 本稿のおわりにあたって一言強調しておきたいことがあります。それは、「薬という<モノ>による苦痛の一時しのぎ」が最も低コストの解決策であるというのがわが国の現状であり、国家財政的にも「おいしい」という事実です。それに比べると、<ツナガリ>を中心に据えた精神科医療は、マンパワー確保のために莫大な予算投入なしには実現できません(松本俊彦「処方薬乱用にみる精神科医療」井原裕・松本俊彦・よくしゃべる精神科医の会(編)『くすりにたよらない精神医学』日本評論社、2013年、p80)。


*松本氏のいう「<ツナガリ>を中心に据えた精神科医療」には、宗教界も貢献できることが多いと思います。