アディクション医療の周縁性について

 私はアディクション問題を専門とする精神科医ですが、わが国のアディクション医療体制の不十分さに失望してきました。専門病院は少なく、精神科医のなかにもこの問題を扱える医師はきわめて少ない現状があります。ベテラン精神科医はこうした問題を抱える患者を毛嫌いし、若手精神科医に至っては最初から「アウト・オブ・眼中」という感じです。もちろん、少数の専門医は存在し、学会などで顔を合わせることはあります。しかしそのたびに、「俺たち、一種の絶滅危惧種だよね」と自助グループ的な傷のなめ合いに終始し、懇親会では、大抵、翌朝に悔いを残す悪酔いをしています(松本俊彦「おわりに」松本・宮崎(編)『依存とアディクションープライマリー・ケア/救急における関わり方入門ー』南山堂、2015年、p249)。


*男性優位の医学界におけるアディクション医療のこうした周縁性を考えると、アディクション問題は、今後も女性の多い臨床心理士自助グループという「宗教」の縄張りであり続けるでしょう。