ドラッグ・フリー・ライフ

 かつての渡辺さんは、「くすりをいっぱい飲んでいたときはそんな感覚もない、ただ息をしているだけみたいな、自分の感情なんてあるんだかないんだか、自分でもわからないぐらいでした。くすりが減っていったときに、当たり前のことが当たり前に見えてきた」(七頁)と語ってくれています。
 私は、ドラッグ・ディペンデントな患者さんに申し上げたいことがあります。目覚めた朝の爽快感、食事のおいしさ、夕焼けの美しさ、働いた後の心地よい疲労感、さらには、愛し合う夜の感動、そういった人間が本来感じてしかるべき、幸福な生活感を回復していただきたいのです。それがドラッグ・フリー・ライフをお勧めする私の願いです(井原裕「ドラッグ・フリー・ライフのために」井原裕・松本俊彦・よくしゃべる精神科医の会(編)『くすりにたよらない精神医学』日本評論社、2013年、p15)。


*ごもっともです。