アルコール依存症・DV・格差

 しばしば反問されるので記すが、決して、社会の上層部を治療しての結論ではない。むしろ、上層部は治療が困難である(熊田註;症状が悪化するまで持ちこたえてしまうため)。それはアルコール中毒でも家庭内暴力でも変わらない。衰退していく階層、たとえば職人、坑夫などもやはり困難である。屈辱体験が深刻であるということだ。逆に酒への近づきやすさは、それほど決定的ではない。たとえば、酒商、建築業など(中井久夫「慢性アルコール中毒症への一接近法(要約)、1982年追記」『世に棲む患者』ちくま学芸文庫、2011年(初出1972年、1982年追記)、p133)。


*1990年代以降の日本社会における格差拡大は、アルコール依存症やDVに、治療困難なケースを増大させたのかもしれません。