アルコール依存症とユーモアと「ゆとり」
アルコール症は治療上、活用できる特性を持っているだろうか。
いる、と私は思った。統合失調症の治療が主であった私には、患者がユーモアを理解するようになるのは回復途上の重要な目安であった。「あせり」の中にいるうちはユーモアが湧き出ないし、理解もなかなかである。ユーモアは「ゆとり」の芽生えになる。
(中略)
アルコール症のユーモアが、たとえ自嘲的であれ、自虐的であれ、とにかくユーモアはユーモアである。アルコール症の人たちは、たとえしぼりだすようにしてでも、とにかく自己観察をし、「ゆとり」を見出そうとしているのだ。これに注目しない手はない(中井久夫「煙草との別れ、酒との別れ」『中井久夫集10』みすず書房、2019年(初出2008年)、pp.247-248)。
*アルコール依存症患者にも、「ゆとり」が必要なようです。