認知症と精神医学

 臨床精神医学もまだまだ認知症患者その人のさまざまな側面を明らかにしているとはいえない。長谷川式テストはよくできている、それは主に「三人称の人」(赤の他人)とのやりとりに関するものである。
 「私は私の人生を生きていない。他人の人生を生きさせられている!」という患者の絶叫をきいた。しっかりしたアイコンタクトは面接の前提条件なのに「診察の時に顔さえみてくれない」と書いている患者がいた(中井久夫「私の世代以後の精神医学の課題」『統合失調症の有為転変』みすず書房、2013年(初出2011年)、p134)。


認知症患者に対する偏見をいかにして除去していくかは、社会全体の課題でしょう。