統合失調症の治療と「母性」
急性統合失調症状態を無理に「理解」しようとする必要はない。折れ合おうとする必要はない。できないことを無理にすると徒労で有害なだけだ。しかし人間は理解できないものでも包容することはできる。
それは広い意味での「母性」である。筆者は男性だが、統合失調症の治療の際は、自分のなかの女性というか母性を動員している気がする。ただ、「母性」にも「副作用」がある。それはきつく包容しすぎて、窒息させることである。「卵を握るような、ふわりとして落とさない包容」という感じがよかろう。
患者にたいするときは、どこかで患者の「深いところでのまともさ」を信じる気持ちが治療的である。信じられなければ「念じる」だけでよい。それは治療者の表情にあらわれ、患者によい影響を与え、治療者も楽になる(中井久夫+山口直彦『看護のための精神医学/第2版』医学書院、2004年、p142)。
*鋭い意見だと思います。