摂食障害と「成長」

 摂食障害の治療をする上では、常に「成長」というテーマを頭に入れておく必要があると私は考えている。成功した摂食障害の治療を振り返ると、拒食症にしろ、過食症にしろ、明らかにそこには「子ども」から「大人」への「役割の変化」というプロセスがある。「拒食」の患者は、「自分一人の努力で何でもできなければならない」という対処法から、「人の力も借りながら、できることをやる」という対処法へと変わる。「過食」の患者は、「自分の気持ちを言わない」という対処法から、「自分の気持ちも話してみる」という対処法に変わる。いずれの場合でも、後者の対処法の方が適応的であり、「大人のやり方」である。対処法の変化に伴って、周囲との関係性も変わる。より成熟した関係性になるのである。自分や相手の不完全さを受け入れる、というのもその一部である(水島広子摂食障害の不安に向き合うー対人関係療法によるアプローチー』岩崎学術出版社、2010年、p171)。


*だとすれば、「助け合う人間関係」と「何でも話せる友人」がいれば、摂食障害にはならないのではないでしょうか。摂食障害の増加には、現代社会における人間関係の希薄化を反映している面があるのではないでしょうか。水島氏は、「拒食症は強迫性障害PTSDのように不安障害として分類した方がよほど現実の治療に即していると私は思う」(同上、p酛)とお考えですが、それならばなおのことそうです。


「『入信即布教』を再考する」
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20130714/p1
「不安障害の信仰治療についてー天理教の事例よりー」
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20110907/p1