認知行動療法ブームに対する批判

http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/52799864.html より転載
認知行動療法ブームに騙されないように


抗うつ薬神話が崩れ、認知行動療法ブームが訪れようとしています。
現在、精神医療の薬物療法に対する批判が大きくなってきています。多剤大量処方に代表される、薬の使い方の問題が大きくクローズアップされるようになりました。そして、単なる「使い方」の問題にとどまらず、薬物療法そのものの科学的根拠が揺らぎ始めています。
そこに出てきたのが認知行動療法です。では、認知行動療法とは、薬物療法に対するアンチテーゼとして登場したのでしょうか?
多くの人がそうだと誤解しているようですが、実情は全く違います。以前から生物学的精神医学(≒薬物療法)VS心理療法という対立構造はありましたが、どうやら最近の認知行動療法ブームはそれとは全く異なるようです。
では、認知行動療法とは何者でしょうか。私の評価では、「薬物療法の隠れ蓑」です。認知行動療法の開発者にはその意図がなかったかもしれませんが、少なくとも今の日本でのポジショニングはそうなのです。
日本の精神医療が薬物療法に偏重しているという事実はもはや隠し様がありません。その批判をかわすため、厚生労働省は「薬物療法のみに頼らない」精神医療の体制作りに取り組んでいるとアピールしています。しかし、薬物療法のみに頼らないとは、なぜかイコール認知行動療法なのです。森田療法でも栄養療法でも、除外診断の強化でも環境調整重視でもないのです。
そして、ここがポイントなのですが、認知行動療法薬物療法に取って代わるものではありません。認知行動療法薬物療法は必ずセットになって促進されるのです。「本物」の認知行動療法専門家や、開発者にはそのような意図はないかもしれませんが、日本で第一人者とされている精神科医の意図がそうなのです。
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2998
この第一人者が認知行動療法についてどのように捉えているのか、面白い情報があります。
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2002dir/n2497dir/n2497_01.htm

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村崎 大野先生というと,「認知療法」がすぐ頭に浮かぶのですが,認知療法的なアプローチをしながら薬物療法を行なうことはありますか。
大野 それは意識してやっています。例えば最初に薬を出す時に,薬に対する認知というのがありますね。かなりの人は飲みたくはない。薬に頼らないといけなくなって情けないとか,副作用が怖いということがあります。
そこで少し薬について説明し,「最初から怖がっているというところに,あなたの心理的な問題があるのではないか」と話して,「そういうところで少し考え方を変えてみたらどうだろう」と話すことはよくありますね。

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つまりは、認知行動療法薬物療法と対立するものでも、取って代わるものでもなく、むしろ促進するものとして利用されているのです。
この精神科医は、とある方の主治医であるため、恐らく現役では日本で一番有名な精神科医ではないでしょうか。しかも、今年4月から国立精神保健衛生医療研究センターの認知行動療法センター長に就任しています。今年度の予算は1億円もついているそうです。
そういえば、ある専門家が「認知行動療法で7年もおやりになっている方がいるようだけど、少しもよくなっていない」と発言したことが週刊文春の記事になっていました。まあ、国民の誰もがうすうす気付いていることを代弁してくれた形になりますね。
薬物療法は効果もエビデンスも乏しく、危険性だけがやたらと高いという認識の下、薬物療法をやる前に認知行動療法が施されるというのであれば、まだ意味があるかもしれません。しかし、現状ではそういうわけではなく、単なる客寄せパンダ的に形だけ導入する精神科医も出てくるでしょう。かつて大学が心理・心のケアブームに乗っかって心理学部を乱立させ、使い物にならない人材を過剰供給したようなことが再び起きるかもしれません。
鋭い精神科医は、認知行動療法のDisease Mongering的側面にも気付いています。
http://kitasatomiyaoka.web.fc2.com/201111cbtdiseasem.pdf
宣伝や普及の背景にある、「意図」「利権構造」を理解しましょう。


※余談ですが、上記リンク先にある大物精神科医の対談は非常に興味深いです。2002年といううつ病ブーム真っ盛りに精神科医がどのようにSSRIを捉えていたのか、うつ病ブームをどのように捉えていたのかわかります。CYPの概念や薬物相互作用の問題も、第一人者は当然のように理解していたこともわかります。


*私は心理学科でも教えているので、認知行動療法ブームの宣伝や普及の背景にある「意図」「利権構造」も見えます。