クレージー・ライク・アメリカ

 自然界と同様に、精神疾患に関する概念や治療法においても多様性が失われつつあることに懸念を抱かずにはいられない。メンタルヘルスの均質化は、絶滅しつつある動植物のおかれた厳しい状態と同じように、私たちの人間性を失わせる可能性がある。さらには、心の理解の多様性も、その価値が十分に認識されないままに消えてしまいかねない。植物学者は熱帯雨林にこそ、いつか現代の疫病を治癒する化学物質がひそんでいるかもしれないと示唆している。同じように、メンタルヘルス精神疾患に関する多様な文化的理解のなかに、失ってはならない英知が存在しているのかもしれない。この多様性を消すのであれば、命がけの覚悟がなければならないのだ(イーザン・ウォッターズ『クレージー・ライク・アメリカー心の病はいかに輸出されたかー』紀伊國屋書店、2013年(原著2010年)、p13)。


*私は、日本生まれの森田療法は、いまこそ見直されるべき「失ってはならない英知」のひとつだと思います。