疾病利得と信仰治療

Wikipedia精神分析」より引用


<疾病利得>
病いであることから得られる利益。フロイトによれば、心的な苦痛を回避するために内的葛藤を抑圧し、その結果神経症のような症状へ逃避する第一次疾病利得(primary gain)と、疾病であることで周囲の者や社会から得られる同情・慰め・補償などを得る第二次疾病利得(secondary gain)とに分けられる。精神療法では、これら疾病利得に由来する抵抗を解決し、患者の自我がふたたび現実に立ち戻れるようにすることが治療目標とされる。


精神科医中井久夫さんは、クライアントが疾病利得を得ていると判断したときには、「それでは、あなたが安心して治れないのも無理はありませんなあ。」と語りかけていたそうです。内観法では、問題を抱えているのが未成年である場合には、本人だけではなく親にも内観させることによって、まずクライアントが「安心して治ることができる」家庭環境を作った上で、クライアントの神経症の背後にある抑圧された内的葛藤を自覚させて解決しているのだと思います。そして、このまず「安心して治ることができる」家庭環境を作るという方法は、内観法だけではなく、多くの宗教による信仰治療に共通している方法なのでしょう。ある意味では、すべての病気は程度の差こそあれ心身症ですから、それだけでも病気が治癒することはあると思います。
 また、非医療モデルに基づく援助論であるアディクションアプローチは、医療モデル(疾病を診断し治療するという主客二元論)と異なり、1.本人と家族を区別せず治療対象とする、2.援助の有害性・限界の認知、3.当事者(自助グループとの棲み分け)などを特徴とする。このうち、「本人と家族を区別せず治療対象とする」という点は、本人が「安心して治ることができる」家庭環境を作るのに役立っていると思われます。