認知行動療法の限界

 うつ病の急性期には、辛い症状を改善する、薬の力は大変有効です。しかし、抗うつ薬精神安定剤では、ものの見方を変えることはできません。近年は、治療が長期化している患者の多くが、不必要に多くの種類や多量の抗うつ薬を投与され副作用で、うつが悪化した、凶暴になった、等の報告があります。
 「うつ病先進国」のイギリスでは、抗うつ薬に頼る治療に限界を感じ、二年前から、カウンセリングと認知の転換でうつ病を治す「心理療法」を、政府が治療の柱に据え、効果を上げています。認知療法を開発したベック博士は、うつ病患者は、非現実的で否定的なゆがんだものの見方をしているので、うつ病治療には、認知の修正をして、肯定的なものの見方を習得することが必要だとしています。
 しかし、認知療法では内観で得られる、「私はどんな存在であっても、多くの人のおかげで生かされて生きている」というような気づきや喜びを体感することはできません(千石真理「内観療法うつ病への効用」『大法輪』2011年7月号、大法輪閣、2011年、p69)。


薬物療法心理療法の限界の向こう側に、おそらく宗教の役割があるのでしょう。