にぎやかな死の看取り

 私は在宅の看取りを指導しておりますので、死の迫った患者の家族には、出来るだけ病人の周りで笑い声を立てること、孫やひ孫がなついている場合にはその子たちをそばに来させるように勧めていますが、今まではいずれの例でも、看取りを終えた家族から感謝されております。
 ではなぜ臨終に近い人の周りを明るくにぎやかな雰囲気に保つのがよいのか。私は、それは死に往く人が、自分の残した「世界とのつながり」つまり、子や孫たちとの「つながり」を経験できるからだと解釈しております(大井玄「在家坐禅者のこころ」貝谷・熊野(編)『マインドフルネス・瞑想・坐禅脳科学と精神療法』新興医学出版社、2007年、pp.71-72)。


*「陽気ぐらし」を目指した初期の天理教が、瀕死の病人の枕元でドンチャン「おつとめ」をしたのも、同じような機微からかもしれません。―「医学とは敗北の技術である」(中井久夫