BPDは「パーソナリティの障害」ではない

 前節の概念の歴史に表れているように、この疾患をパーソナリティ障害に位置づけるのは、考え方の一つに過ぎません、特定の精神症状によって診断される一般の精神疾患という見方もまだ有力です。
 境界性パーソナリティ障害をパーソナリティ障害と位置づけるにしても、それが「パーソナリティの障害」という意味ではないことには注意が必要です。一般に「気分障害」が「気分の障害」と定義されているように、「〜障害」というと「〜の障害」と受け取られるのですが、「パーソナリティ障害」はそうではありません。(中略)
(中略)
(前略)それゆえ、私たちが境界性パーソナリティ障害という用語を使う際には、それが「パーソナリティの障害」だと受け取られないように十分に注意しなければなりません。もちろん境界性パーソナリティ障害の人やその家族、関係者も、この診断名をそのように誤解しないでいただきたいと思います。実際には、境界性パーソナリティ障害は改善する可能性の高い精神疾患ですし、周囲の人の関わりは患者の大きな助けになります。希望を捨てる必要はまったくありません(林直樹「監訳者解題」タミ・グリーン『自分でできる境界性パーソナリティ障害の治療ーDSMー4に沿った生活の知恵ー』誠信書房、2012年、p100-102)。


*こういう誤解は、まだまだ根強いと思います。