前青年期と性衝動ー「少年A」についてー

 いずれにしても、青年期前半の、とくに男の子たちにとって、奔流しだす性衝動について、互いに告白しあうにしろ互いに揶揄しあうにしろ、互いに確かめあうための親友をこの時期に欠くことのデメリットの大きさは、従来にもまして強調されていいと思う(笠原嘉『青年期ー精神病理学からー』中公新書、1977年、p27)。


*性中枢と攻撃中枢が未分化であったために性的サディズムに陥り、やがて「精神的鎖国状態」(中井久夫)にまで追い詰められていった、神戸連続児童殺傷事件の加害者「少年A」の事例から私たちが学べる教訓のひとつは、この点にあるのではないでしょうか。日本のアカデミズムが、「男性の性」を暗黒大陸のままにとどめていることも、事件の背景のひとつだと思います。