向精神薬と祈り

(前略)それから、ちょっと芝居っ気がありすぎるかもしれないけれども、処方が新しくなるときの私は「効きますように」といって渡します。そのとき片手で軽く祈ることもあります。ご承知のように、向精神薬プラセボ効果は三〇パーセントであり、薬効はそれに一〇パーセントかそこらを上乗せするわけですから、この「効きますように」は無意味ではないと思います。処方をカルテに書き込むかコンピューターに打ち込むときも、「この処方がうまく働くといいねえ」とつぶやくのがよいでしょう。このつぶやきはこちらの心もしゃんとさせてくれますし、処方する行為は究極は真心です(中井久夫「患者に告げること 患者に聞くこと」『日時計の影』みすず書房、2008年(初出2007年)、p8)。


*「心の病」の信仰治療を考える上で、示唆的な見解です。